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レトロ×最先端×オンラインの木型屋
『松葉製作所』を訪ねる。【SFV Online Vol.3】

「この製品が売れなければ、転職活動を考えています」
今年初めごろから、本日工場見学をさせてもらう松葉製作所の松葉寛和さんが口にしていた言葉です。

今日は2020年6月29日に行なわれた、広島県府中市で木型制作を行う松葉製作所の工場見学を取材しました。
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70年以上前から、自動車エンジン部品の鋳造用木型作製を本業にしてきた同製作所。現在は父親と2人で製作を行っていますが、木型需要は落ち込むばかり。販路開拓として2011年に初めて製作したのが、Apple社のiPhone用ケースでした。
画像提供:松葉製作所
木型で培われた精度の高い造形と、婚礼家具で有名な府中市の高級無垢材の美しさが人気を呼び、テレビ取材や有名歌手のツイートなどにより着実にファンを増やしていきました。

しかし、どうしても本業の木型需要は減少の一途。そんな状況下でさらに新型コロナウイルスの影響を受けた結果、冒頭の言葉に戻ります。

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「この製品が売れなければ、転職活動を考えています」

そんな背水の陣で2020年3月から始まったのが松葉製作所の「AirPodsPro木製ケース」のクラウドファンディングでした。同社の製品コンセプトや想いとファンの支援により、わずか31時間で目標額の100万円を達成。その後目標額を大きく超えて217人から250万円超の支援を受けて終了しました。
画像:松葉製作所
リーマンショックやコロナ禍で廃業の危機に瀕しながらも、常に新しい一手を選び続ける松葉製作所。今回、瀬戸内ファクトリービューの参加企業メンバーが見学しました。
34年前のPCと、先週届いた最新機器。
あいさつ代わりにと、工房の中で松葉さんが嬉しそうに準備していたのがプロジェクター。
「工場の壁に映像を映すと、かっこいいじゃないですか」

そこに流された映像は「マツコの知らない世界」に木製iPhoneケースが取り上げられた時のもの。テレビの中で目の前にあるiPhoneケースが紹介されることに、見学者からも驚きの声が聞こえます。
 
「iPhoneケースは2011年から作り始めました。他にもスピーカーやヘッドホン、AppleWatchの充電台もあります。」と松葉さん。
以前撮らせてもらった松葉さんとiPhoneケース
今日は見学を受け入れる傍らで、クラウドファンディングの返礼品を順次仕上げていくとのこと。5月から1日も休まず納品を目指しているそうです。参加者の一人も「AirPodsPro木製ケース」を現場で受け取っていました。
Airpods Proのケースが綺麗に収まり、パタンと閉じる木のケース。綺麗です。
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回りを見渡すと、機械や木材がたくさん。
 
ずっと使われてきた、木材を削るベルトサンダー。
 
今回のAirpods Pro木製ケースに使われるのは「ウォールナット」や「ブラックチェリー」。高級家具や楽器にも使われる無垢材です。

先日は瀬戸内地方を盛り上げるアイドルSTU48とアンガールズが出演するテレビ番組の収録を受け入れ。

希少材木のチューリップウッドを使った特注「AirPodsPro木製ケース」(お値段なんと43,800円)を5個と、30個の別注ケースを制作。「チューリップウッド」は、松葉さんに「舞い散る木屑さえ優雅で美しい」と言わしめたヴェルサイユ宮殿にも用いられる木で、国内での流通はもう無いそうです。

番組終了後、販売開始わずか60秒で全製品は完売。想像を超える人気でした。

取材の際に貰ったサインも、嬉しそうに見せてくれもらいました。こうして注目される企業が地元にあるって、驚きです。
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すべての製品を設計するのは、NECが1986年に発売した30年以上前のパソコン『PC-9801VX』。
 
 
図面が削り出すケースの外観や穴の位置を指定します。

今の小学生とかにこれが「パソコン」だと紹介したら、いったいどんな反応が返ってくるんでしょうね。

そして、実際に製品を削り出す装置がこちら。
(機械を工房に入れるとき屋根を外して天井から吊り下げてたそうです。)
設計図を基に、機械がケース削り出します。「重要なのは、操作ではなく固定方法なんですよ」と話す松葉さん。長年の経験をもとに削り出した後、仕上げはもちろん手作業です。


実は工場見学と並行して、オンラインでも同時に工場と製品の紹介をしていました。そのために使われていたのが、この配信セットです。
 
最新の一眼カメラとスマホをPCと繋いでオンライン配信環境を構築しています。

装置が先週届いたということで、試行錯誤しながら運用されていました。以前からインターネットでの情報発信が重要だと認識されていた松葉さん。現場の作業風景や製品への想いを直接届けるため、オンライン配信環境を整備したそうです。
現場作業×工場見学×オンライン展示会

この日は現場の工場見学風景をオンライン展示会にも中継していました。Remoというオンラインミーティングシステムを利用したイベント「Local Craft Market」に、全国からものづくりに関する企業とクラフトに興味を持つ参加者がオンラインで集まりました。

 
今いる現場の様子がオンライン配信からも見られる様子に、見学者も興味津々です。
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スマートフォンに向かって、オリジナルのAppleWatch充電台を紹介する松葉さん。

次にカメラを切り替えて、機械による削り出しを間近で紹介。一通りの説明を終えると販売ページを紹介し、対応が終わればまた通常の納品作業に戻ります。無駄な時間が一時もありません。

オンライン配信を試さない理由が、ない。
「今まで時間と費用をかけて行っていた「展示会」が、作業をしながら並行して説明ができることでコストがかなり削減できた。今日も作業をしながら、現場を見学してもらい、さらにオンラインでも商品説明ができる。可能性しか感じません。」

なるほど、これが松葉製作所の原動力。今回の見学では、ものづくりの現場だけでなく松葉製作所の挑戦そのものを見ることができました。
小さな町工場が技術とアイデアで新たな製品を作り、最先端の技術を取り入れて全国へ発信する。こんな企業が地元にあることに、驚きと嬉しさがありました。

すでに3回行った業種を超えた工場見学は、受け入れ側も見学側も気付きがあると嬉しい声をもらっています。お互いの技術や知識が新しい問いをつくり、気づきが生まれる。

転職の危機を乗り越えた松葉製作所とともに、地域として更なる挑戦が楽しみです。

紹介した製品の詳細は、松葉製作所のWebページをご覧ください。

記事を書いた人:ナカニシ ミツヒコ